きりんの首の骨/あ。
 
は空を見上げる
緩やかな形を描いて飛ぶ鳥に
細く長い雲を吐き出す飛行機に
たった今その手を離れた風船に
知らない世界を思い巡らせ
真っ白なスケッチブックに色が乗る


動物園に動物がいるように
きりんを産んだきりんがいるように
ガラクタの世界にも親がいて
親から生まれた子どもがいるんだ


きりん、ねぇきりん
子どもは大きくなりたがってる
世界が広がるのをじりじりと待ってる


首の骨をかしゃかしゃと砕いてばら撒けば
もしかしたら空にも手が届くかもしれない
きみの瞳を正面から捉えられるかもしれない


さほど高くない柵から手を離し
持ち上げていた視線を足元に落とすと
わたしを支える首の骨が
ぱきりと小さく音を鳴らした




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