織布/楽恵
 
ギッタンバッタン
ギッタンバッタン
揺れる織機に糸は止め処なく流れる

機織りする貴女の家を訪ねた
白髪交じりの老眼鏡に覗くまなざしは
古代の機織の乙女と変わらぬ清楚さで
遥か遠く
白い川の向こう岸にある

ギッタンバッタン
ギッタンバッタン
かしずくように耳を澄ます
踏み板のリズム
それは素朴で気高い舞踏に似た 
かつて女たちに母から娘へ伝えられていた祈りのリズム
年老いて乾いた貴女の手が操る杼(ひ)は
けれどもまるで魚のよう
織り上げられていく川に
花は落ち、水は流れる

気づけば私は貴女が漕ぐ舟に乗る
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の一糸一糸
[次のページ]
戻る   Point(8)