触発/朧月
 
私の
胸が心が頭が
なにかでいっぱいになったとき
私の指に伝達されて
ああ
それは走り出すのです

夕焼けに染まる空は
残らず紅に濡れてゆくように
火で焼いた皮膚が
じんわりと何層にもただれてゆくように

ちりり と カラダの内側で音がします

もどかしいから
素手で触れるのです
足りないから
掴みにかかるのです

一瞬で
深いところへたどりつかないと
間になんかあわないのです

しんと静まり返った
ペイジに私は
自分の口から吐き出した想いで
端から 端までを塗りつぶす

ああ それなのに
もう 追いついていないのです
あなたが振り向くよりも早く
私は そこから遠いところへいってしまっているのです

そうでないと
私の感情は
私から 永遠に生まれてこないのです




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