花の名前をおぼえられない/角田寿星
 

コスモスがコスモス色に咲いてて
ススキがススキのように揺れてる
土曜の朝
私鉄沿線の住宅地を
ぼくとたあくんは歩く

めずらしく陽が射している
建物の影が舗道をおおって肌寒い
ぼくは細長く伸びるわずかな日向をえらんで歩き
たあくんは
カエデの型をしたカエデの落葉を次々に踏んで
足裏の感触をさくさくと楽しんで歩く

たあくんも もう6歳
三語文までは話せるようになり
自分の意志も少し伝えられるようになった
ひらがなを書けるようになった
「小学校の普通学級は…ちょっと無理ですね」
と つい先日 通告された

名前の知らない木が白い大きな花を咲かせている

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