「ピカソ」/月乃助
 

今日の鏡は
流体にちかいのです
あまりにたくさんの欲望を映し出し 
水銀の鏡面に、他人のわたし
髪を短くすぎるほどに切ってしまったまま
ばらばらになった抽象画の 
かけらが流線の色彩を
つなぎあわせ

力の抜けた顔で
そっと触れればそこから溶解しそうな、
流れ出る
ゆっくりとあとずさりをした
壊れてしまわないように 立ち去りなさい
少しのゆがみが 情事の水滴をつくっているのなら なおさら
現実にもどす 行き着く先をおしえてくれる
 
バスルームの
今朝が今日のわたしを選択する
昨日の陶酔を引きずりながら
いつまでこんなことを続けますか
満たされぬのなら
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