ほうぼう/
木屋 亞万
らを見ている
いつの間にか立ち止まっている私に
のしのしと歩み寄ってくる
目と目で接吻できる距離に来て
海の蛙はホウボウと鳴いた
麦の根を引き抜くような追い風が吹いて
竹のじゃれあう声がここまで届いてきた
気がつけば目の前の魚は背を向けている
その背中は鮮血のように赤かった
何匹もの黒い赤ん坊が
去り行く背中を追いかけていく
ほうぼう探し回ったけれど誰も私を捕まえには来ない
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