血/綾瀬のりこ
三十年ぶりに会った母
記憶の片隅にも無い母
けれど会った瞬間に
本当の母なのだと実感した
今まで母(と呼んでいた人)に感じていた
違和感の訳がわかった気がした
何故だかはわからない
でも確かに違った
母なのだ
妙な安心感があった
自分が何処から来たのかが
ついにわかったのだ
足元の砂がさらさらと流れていくような
不安が消えた
血の繋がりというものを
これほど感じた事はなかった
母から私へ
そして私から娘へ
脈々と流れる赤い血
今はこの血がいとおしい
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