水をふくむ夜/吉岡ペペロ
 
肌さむいが水をふくんだ夜だった

水のぶんさむさは何処かぬるかった

ことしさいごの年始の会合のあと

熱気にすこし汗ばんだからだに

夜は心地よくてなにか昔を思い出させた

どんな昔?

どんな顔立ちの昔であったか

思い出すこともさやかにやめていた

昔は昔を思い出すことなぞなかったのだ

水をふくむ夜、

それはまるでモーツァルトのようだ
戻る   Point(7)