追憶/吉岡ペペロ
 
生まれた命のかずだけ

追憶はある

みんな誰かしらの

何かしらの追憶なのだ


この夜も、あの朝も

昼間もあったか、夕暮れもあったか

七千年まえのナイルの少年の

二億年まえの生物の切実の

六十億年まえの素粒子たちの

百年まえのロシアの小説の

十年まえ娘を失ったわたしの


生まれた命のかずだけ

追憶はある

みんな誰かしらの

何かしらの追憶なのだ
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