遠/木立 悟
れて歩いている
あなたはあまりにも正しく 遠すぎる
皮は幾重にも厚く
もはや脱ぐことさえできない
風は初毛ばかりをむしり
他は荒地のための荒地へと変わる
昼の光の隅に
亡霊が立っている
午後が来て 灯が点る
夜が来て 誰も居ない
川はやがて海へ着く
海のむこうの海へ
更にむこうの海へ
川は川のまま底をゆく
負の星が降り
水に浮かぶ
しあわせを得たいものだけが
しあわせの幻にすがりつく
菓子を分けてはくれまいか
日に日に増える震えをそらんじ
見えない雲へ
見えない名前を託してゆく
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