ニコライ堂の鐘楼に/……とある蛙
ニコライ堂の鐘楼に
大きな黒い月が重なって見える夜
空気は鋭角の厳しさをもって
僕を立ち位置から取り除こうと
鈍くて黒い月光りが刺す。
ニコライ堂の裏を降りて行く坂の途中で
首の長いラマのような動物が歩いている。
胴体は黄色地に茶色の縞が縦に入っている。
足元は焦茶色だが膝から下の毛
顔は駱駝、表情は小馬鹿にした顔
首を伸ばしこちらが側に顔だけ向けて
ニーッと剥き出しの歯茎を見せ
月明かりの中 ゆったりと
横断歩道を渡って行く
相変わらず坂を下ろうとするが
道の反対側のビルには
平べったい顔をしたブロンズの梟が1羽
ほーほーと低く鳴いている。
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