労働/攝津正
ち去り、セブンイレブンで二万円借り入れ、ジャズピアニストの浜村昌子の口座に入金した。この購入を巡って、口論になっていたのだった。住宅ローンが無く借金を返す金が無く生活費が無いのにお前はまだCDを買うのか、と。攝津は、それでもCDが欲しかった。
死ぬと決めた人間が、CDを買うのも可笑しければ、簿記の勉強をするのも倉庫で働くのも可笑しかった。死ぬなら、死ぬ準備だけをすればいい。攝津は死にたい、と強く思った。だが、「思い」だけでは死ねなかった。攝津の身体は、メタボリックである事を除けば健康だった。その身体を何らかの手段で破壊せねば、死ねない。
死ぬとはどういう事だろう。攝津には子供のように、そん
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