労働/攝津正
 

 攝津には独りで下らぬ冗談を呟き独りで聞いて独りで笑う癖があった。例えば攝津は、二和向台という町に住んでいるが、それを「片輪向台」だの「豚は無効だい」などと言う。

 攝津は「もやい切断企画(仮)」という文章に怒っていた。怒る自分の卑小さ、狭量さが自己嫌悪を誘うし、怒りを表明する事自体が筆者の挑発に敢えて乗る事だと分かっていても、乗らざるを得ぬ。攝津は、左翼的政治に特有の芸術等への見下した目線を感じた。攝津は、今音楽と文学、哲学に真剣に取り組んでいると自負している。筆者の文章は、そのような者の実存を否定する物以外ではあり得ぬ、と攝津は感じた。それ故の反撥である。自分自身の狂犬性を棚に上げて
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