労働/攝津正
 
存在に。攝津自身が、そのような者であった。攝津の時給が千円に達した時は生れてから今まで一度も無かった。攝津は千円以下の時給で、自分の時間を切り売りしていた。
 NAMがうまくいかなかったのは単純に、起業が出来る者が会員に居なかったからだと攝津は考えていた。仕事が無いなら起業すればいい、言うのは簡単である。しかしこの高度な資本主義社会で実際に起業し、成功させるのは、協同組合型であろうとそうでなかろうと、単に難しい。経営者には卓越した能力が求められるし、遭遇する困難も大きいであろう。企業を起業したり経営したりする能力が稀少だから、NAMは失敗したのだ、と攝津は考えた。また、協同組合主義の左翼の歴史の
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