労働/攝津正
 
で、『起きたことと起きなかったこと』という拙い習作を書いた。当時付き合っていた。花子ちゃんとの出会いと別れを書いたものであった。文学研究会には、小説の巧い先輩が居たが、一人は大木さんと言い今は徳田秋声記念館に勤務している。もう一人は山本さんと言い今は『ユリイカ』の編集長をやっている。神沢さん夫妻との出会いも、文学研究会でであった。
 文学研究会は、毎年早稲田祭に柄谷行人を招いて講演会を催していた。攝津は、柄谷行人の著作に傾倒していた。ところで前田さんが、柄谷行人が次のように述べていると教えてくれた。《厳密に定義すれば、私小説とは、作品外の文脈に依存しなければ成立しない小説を指します。》(『倫理2
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