夜が来る(名前を付けられない喪失なんてまるで人生に付けられた名前みたいだ)/ホロウ・シカエルボク
 
ニュー・モードの襟巻きみたいにファッショナブルに巻いた黒猫が壁の上で夜を呼んでいるように見えた
ずっと眺めているとそいつが不意に俺の方を見た
俺は気まぐれをおこしてそいつに話しかけた
おまえは夜のコンダクターで俺はおまえの背中にいる聴衆
出来れば心地よいセレナーデで明日の朝まで眠らせておくれよ





やつは確かに俺を眺めてひとときにやりと笑ったが
それが約束の証なのかは俺にはてんでつかめなかった










夜が来る





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