冬茜/within
 
軽くジャンプする
ヨッ ヨッ ヨッ と
繰り返し繰り返しステップを踏むたびに
魂が軽くなるようで
顔に当たる日差しが
ザクザクと繊細な雪解けを
踏み潰す

陰に日向に
行き来する繰り返しを
小さな衛星の公転軌道を測るように
ノートに記している

洗面所の下に隠した
改造拳銃を
こめかみに突きたて
引き金をひく
弾は入っていない
カチンカチンと機械音が
鳴るだけ

あっけらかんと人を殺す世代が
情念を抱いて赤ん坊を産む

ここはヒッグス場だから
全てのものに質量が与えられ
互いの重みをかさねて
歯車を噛み合わせるように
体温を交わす

火照った身体があまりに熱いから
君の湿地にナイフを刺したくなる
記憶を失ってしまう前に
憐憫が芽を出して
愛情が腐敗して臭いを放ち出した頃
ひとりに還る、バスに乗る

握りつぶした蜜柑の汁が
手のひらをべとべとに
黄色くし
湿った地面は
梟の吐瀉物で作られている

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