章話・時代/邦秋
同じ時間の流れの中で
あるところでは人に幸せが訪れているし
同じ時間の流れの中で
あるところでは人に悲しみが訪れている
そんな「時間の流れ」に乗って
一日に一本、皺が刻まれていそうな
僕の祖父の顔に備わっている
声が発せられる口というその穴からは
一日に一分、長くなっていそうな
昔話が聞こえてくる
一日に一?、遠くなっていそうな
視線の先を見つめながら
一日に一?、弱っていそうな
音と息を吐き出している
物語でいう最終章に近づいた今、
記される文字は第2、3章辺りの繰り返し
芸がないのではなく、それは、
何度語っても足りないことを表している
僕が自伝を記す中で
同じように毎日皺は増えよう
同じように毎日呼吸は弱ろう
しかし、一体、その最終章で僕は
何を、語れるというのだ
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