思い川/都志雄
 
小さな毛糸の手袋が片一方、
橋の袂に落ちていた

どんな子が落としていったのか

いやそれとも

こんなに小さな手を守ろうと
優しさが形を成して包み込んだのは

私の手ではなかったか


北風の運んできた透明な夕暮れ時
ふと拾い上げた手袋を持て余し、

立てば夕空、座れば川面

思いは川に降り立って
思い流れる、思い川
思い募って川となり

私もこの川下れたら


きっとそこには待っている

こんなに小さな手をしてた
あの日の私、待っている

軒先の明かりの下で
いつまでも


立てば夕空 座れば川面
思い流れる、思い川

小さな思い どんぶらこ
流れ流れて いきまする



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