金木犀の香る頃/鵜飼千代子
 
なにより色の付きやすいあなたが
僕より先に 人ごみの中に入って行く
すべては僕の仕業で 
そしてあなたのせいにした

あなたは 拒絶することを知らない
それは 罪だ
            
社会になど 出したくはなかった
小春日和に縁側で 
ただ傍にいるだけでほころぶ
あなたが

この先 ずっと 
欲しかったのだ

ねえ
金木犀が香ってきたよ
あなたは 秋が来たことに
気付いていますか

がさがさに干からびて
季節すら感じられないところに
いま いるのではないですか

小さなケース取り出して
金色の花弁を

今度会ったとき 
初秋の訪れ伝
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