顔/ソノタ
 
なべ底から泡の首飾りがたち昇る
素早く捕まえ自動で選択
あなたの指はベロアのクッションカバーの匂い
深い緑色の新しい
あなたの指
口に含んで音をきく
髪をひっぱって鎖骨に噛みついて
なにも探らないからだにはからだ
「甘く噛んで、わきまえた犬みたいに」
目をあわせる
ただ近くにいる

「それでわかったような気になっているって」
なにも知らないけれどすべてわかっている
目を閉じたらなにが見えるのかなんて
馬鹿げたことを訊かないで
声はいつだって届いていて
必要なものはもうない
嘴があればつついてみたけれど
雑踏する街路でネオンに気をとられていた
滲んだ墨のような空気
あなたは息をしている
いろいろ溢れているのが見えた

ここはどこだろう
緑色のベロアのクッションカバー
街路のネオン
なんの境界も見えない
指と声
肌と目
舌と息

なんの咎もみえない

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