緑に覆われた世界を垣間見た。/影山影司
新米の地図屋やら観測者、開拓者家族、よそ者は毎年沢山やって来た。帰る人間は少なく、次々と新参がやってきたと言う。
「昔ね、開拓者が下見に密林に入り込んだんだよ。ちゃんと地図屋も雇って、稼ぐんだ、って皆息巻いてたっけな。でも帰ってきたのは地図屋一人でね。まだ十代だっけなァ。ヒゲの似合わない顔つきでさ。故郷に金送るんだ、ってたけどね。帰ってきたのは、全く運だろうねェ。それなのに、一週間もしないうちに皆を探しに行くんだ、って密林に入っちゃってね」
店主もそこから先は知らないという。
任期を終えて、帰りの際にはまたあの男を捜そうと思ったが、おそらく彼と会う事は、二度とないだろう。
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