緑に覆われた世界を垣間見た。/影山影司
 
 室内灯は消えていた。幌の隙間から光が差し込むことも無い。エンジン音は聞こえず、静かに、波の音が聞こえる。水面を切り裂く音ではない。船を揺らすリズムに沿った、自然の音だ。横、正面に座る同僚達はまだ眠っている。まだ、目的地に着いた訳ではなさそうだ。俺達は、古い戦争映画に出てくる輸送車両のように、向かい合わせの長椅子に座っている。そして壁から伸びる伸縮性の起毛ゴムを体に巻きつけ(その際、口と目元を除いてうまく体を包み込み、体を固定する)、眠らされていた。火の無い暗闇の中では、ずんぐりむっくりの坊主が背筋を伸ばしてしゃんと座っているように見えるが、異口同音の寝息がそうでない事を教えてくれる。
 手指を
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