ホテル・リグレット/小川 葉
 
たはずなのに
その名前のまま営業を続けた
手違いだったのは
「ホテル」のほうだったのに

「リグレット」が残った
「ホテル」はただの「○○○」となり
荒野の果てに
赤ん坊が生まれた
そのことを知る由もなかった

名前のない赤ん坊の
「○○○○○」を
「リグレット」という文字で埋めた
それが名前だった
生まれて寿命まで生きた
そのことに
手違いはひとつもなかった
それこそが
何かの手違いだというのに
 
 
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