おんな椿/あ。
ひと気もまばらな公園で
湿った土の上に落ちた椿の花は
どこか心細げにこちらを見ていた
ささくれたこの景色には眩しすぎるので
その紅色を熱でとろとろに溶かして
指ですくいとりたいと思っていた
わたしの絵の具箱はいつもぐちゃぐちゃで
どの色も変な形にひしゃげていて
それなのに紅色だけは綺麗なままに保たれていた
鮮やかで無邪気な色気があって
祇園の街で見かける舞妓の唇のようで
彼女の美しくしなやかな動作を思い出すと
子どもながらに汚してはいけないと感じ
使うことが少しためらわれる色だった
おんなになったばかりの頃は
紅色ばかりをまとっていた
唇に艶やかな花
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