【批評祭参加作品】うたう者は疎外する/される/岡部淳太郎
 
る。人として生きる理由の多くが失われてしまうのだ。それを防ぐためにも、あえて未知の部分を残してそれを整理するのを先送りにしてきたとは言えないだろうか。同時に、社会の周縁または外側に混沌を残しておくことで、それを社会の安全弁または活性化の手段として利用しようとしてきたようなところもあると思われる。つまり、社会は意図的に混沌を残してきたのであり、そうすることで秩序を保ってきたのだと言える(余談だが、昔から物語られてきた妖怪や怨霊などの怪異の伝承は、社会のこうした意図的に混沌を残しておきたいという欲求もあって生まれてきたのかもしれない。もちろんそれだけが理由ではないだろうが、妖怪や怨霊などはまさしく混沌
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