創書日和「迎」 どういたしまして。/逢坂桜
おっちょこちょいのあたしは―
道を歩けばつまずいて、
待ち合わせは早すぎて、
座れば荷物を置き忘れ、
いっしょにいる彼に、謝ってばかりだった。
何度も彼の
「you're welcome」
を聴いた。
帰国子女の彼は、時々おどけて、会話に英語を混ぜた。
別れは冬、濃いブルーグレーの空の下。
泣かない泣かない、と手を握りしめて―
「いままでありがとう。あたし、しあわせだったよ」
「you're welcome」
それを聴いて、ついに泣いてしまった。
「me,too、て言わないんだね」
なぜだろう。
とても傷ついた彼の表情が、いまも忘れられない。
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