首輪の外れるとき/りょう
―離して
耳のツンと立った黒い子犬は
首に腕が回されるたび吠えた
―僕がいると
余計に泣かしてしまうから
犬小屋が空っぽになるのを恐れ
子犬の声まで鎖をかけられていた
それでも涙のあとが消せるならと
飼い主の目元をなめた
布の首輪が擦り切れるほど抱きしめられ
光る確かな皮の首輪に変わっても
子犬の抜け毛が飼い主の胸に
たまり のしかかるように
首に回した腕が
喉に食い込むようになった
―息をさせて
舌は目元から遠く空回りし
綿菓子が小さくなるように
前足の力も抜けていった
―もう届かない
子犬は首輪をすべらせ
鎖
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