愛猫/楽恵
 
痛み
意外に鋭い隠された爪のこと
今頃どこで何をしているのか
仕事で車を運転している時や
異国の港町を旅している時
男たちと酒を飲んでいる時に思い出す


私は毎日お前に餌を与えて
お前を飼いならそうとするが
お前が私に従属する気などさらさらないのも分かっている


深夜私が眠りにつく頃
お前はぱちりと目を覚まし
ベッドを抜け出し街に出る
足音も立てず暗い外灯の下を歩き
夜毎違う愛を求めて街を彷徨う
多情で浮気なお前に首輪を嵌めて
私だけに繋ぎ止めておきたい欲望がないと言えば嘘になる
けれども私の知らない所でお前が誰を愛そうが
それはお前の自由だ
もとよりお前にとって私は恋人でも御主人でもなく
お前は自身を私の友だとも奴隷だとも思っていないのだから


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