愛猫/楽恵
 
お前と一緒に暮らしていて
いつも思い知らされるのが
与えた分だけ与えられるとは限らないのが愛だということ
誰よりお前を愛している
手入れされた上質の柔らかな毛皮
しなやかな体つきや
綺麗なピンク色をした薄い唇といつも笑っているような口角
背伸びするときの物憂げな横顔
細く長い尾を動かすたびチラチラのぞく可愛い肛門
息を潜めて獲物を狙う時の緊張した眼と体勢のすべてを愛している

お前と遠く離れているとき
私はいつもお前の事を考えている
かすかに濡れた鼻先の小さな寝息や
甘えるときゴロゴロ鳴らす喉の音
私の足指を舐めるザラリとした舌の感触
機嫌悪く噛んだ時に残る傷の痛み
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