【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
の姿がなかった。しかし三日ほどして、yumicaは戻ってきた。どこに行ってたのかを尋ねると、yumicaは、これを拾ったのよ、と一冊の古びた書物をわたしに見せた。そこに書かれている内容は、わたしにはひとつもわからなかった。おそらく、ブンガクゴク島の住民が残したものに違いない。yumicaは、それを楽しそうに読んでいる。そこに書いてある内容が君にはわかるのかい、とわたしはyumicaに聞いてみた。全然わからないのよ、とyumicaは答えるのだが、相変わらず楽しそうに読んでいる。その晩、わたしは、なかなか寝付けなかった。昼間のyumicaの楽しそうな姿が目に焼きついて離れなかった。わたしは、yumic
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