【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 
「犯人」が準備してくれていたのであたしたちは安心して誘拐されたけれど、知らない女の子が「葡萄の中身の興味があるか」と訊いてくるのであたしは葡萄に中身があるのなら外見も気になるところよねと答えた。女の子は沈黙して頭を振ると首につけていた鈴が鳴った。

 「死んでしまいそうな犬」について鈴を鳴らしながら女の子が語り始めたのでまごついていると、公園のベンチに取り残された彼のノート・パソコンに子供たちのうちの一人がどこかから持ってきたプリンターを接続しているところだった。そのうちここまで印刷しにかかるだろう。葡萄の中身について考えていると、冷蔵庫に埋葬された「ホーキンスさん」役の子供が空洞だったらしい
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