【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 

ぼくは、父親の名前に格別思い入れなどなかったが、ぼくが名付けたミドリガメの名前には少しだけ特別な感情が残った。
(一条「ミドリガメと父親」)



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 公園にはいつも子供が溢れている。カモン、カモンと鴎は空を飛び交っている。冬の公園は寒くて、組んだ足に乗せたノート・パソコンの温みが心地良いよねと呟く彼の隣であたしはドトールのコーヒーをすすりながら湯気の向う越しに半袖短パンの男子たちやそいつらを軽くいなすキラキラした髪留めとヒラヒラしたスカートで闊歩する女子たちを眺めている。

――いかがわしい名前のサイトなんやけど、このサイトで「殿堂入り」になっとる一条さん
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