ノート(冬と耳)/木立 悟
 






花と花の間 手と手のまにまに
祝福の無い冠が
どれほど過ぎゆき
過ぎゆこうとするのか


新しい月より
さらに新しい月が
夜を夜より暗くしている
音の手を引き 海辺へゆく


弦と弦の齎すものへ
声と声はついてゆく
「海辺には?海辺には?」
「わたしとわたし(なにもない)」


昼の光の白の舌
張りめぐらされる午後の血脈
空をひろげ
空を運ぶ


冬わたる岩が橋となり
影になり影になり
霧を霧に曲がろうとして
海すくう雨の手へ落ちてゆく


繰(く)るもの来るもの狂うものらと
空鳴らすものらが同じだと知り
屋根の真下で眠れずに
音の失い光を見つめている


からだへからだへ降りつづく言葉を
からだに消えゆく文字に重ねる
遠くへ遠くへ持ち去られた耳と
会話を忘れて会話しながら

















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