【批評祭参加作品】迷子論序説/岡部淳太郎
 
いう詩集の表題が象徴的に示すように、「失われた」と「見つかった」、「無垢」と「経験」という対立概念は、対立していながら互いに飲みこみ合っている。それらのどちらかだけで全的になることは出来ないのだ。
 人は道に迷う。単純な移動の途上でも、人生という長い道のりの途上でも、人はしばしば迷う。その時に訪れる混沌はその強大な力で人を闇の中に引きずりこもうとするかもしれないが、そのことで人は不安と恐怖を感じるであろうが、それは長くはつづかないだろう。迷子はいずれ見つかり、大人たちの元へ送り届けられる。そして、迷子であった子供は、迷っていた間に見たものを大人たちに語るのだ。その時、彼は迷子になっていたということで、ほんの少しだけ成長しているに違いない。




(二〇〇九年十二月〜二〇一〇年一月)
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