名を呼ぶ/合歓木
名もないような
草花があるのだろうか
たとえ雑草にしても
知らなかっただけなのに
心にとまったなら必ず
名を呼ばねばならない
気にとまった草花の名を
知らなければそれだけ
貧しいのだと
その草花がつぶやく
個別の名一つ知らず
名づけることもなかった
崖の上のような悔悟
忙しかった日々がさわさわと
枯葉のように舞い落ちる
覚えねば失う
手懐けねば見えてこない
名もないような
庭先の不変の草花から
丹念に結び直しするように
冷気の漂う今朝がた
不意の来客が届けてくれた
忘れてきた土産をどっさり
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