赤の缶詰/杠いうれ
 
いやな雰囲気で目覚めるのはよくあることで
なんとなく被害者めいた気分で体を持ち上げる
騒々しい光が 厚いカーテンを押し退けようと疼いている
ぼんやりとそれを見て
胸のした揺れる 赤い実に気付いた


伸びっ放しの髪の先には 木苺がいくつも生っていて
木苺というものかしら髪に生っているのに などと思いつつ
フランボワーズのようだけど早速?(も)いで味見をするのも野暮な気がするし
少々毒々しいけれどヘビイチゴと括るのもはばかられるし
生育とか和名がどうとかなにやら面倒に思え
滅多にないことだし ゆらんゆらん、なんだかきれいに思えてきて
早起きの弟に自慢しようとリビングに
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