たぬき裁判/……とある蛙
した。しかし、あなたとあなたの家族は黒猫を飼い猫にし、えさを与え続け、剰え室内でしか飼わないという過保護ブリで猫という動物の野生を骨抜きにしました。これは重大な犯罪です。あなたのような人のために我が国では猫が異様に増え、ネズミより多くなってしまいました。このことは自然の数的バランスを崩した重大な犯罪です。ですから処罰されなければなりません。」
「そうであれば、犯罪を犯したのは私です。死にかけの子猫を飼おうと女房に提案したのは私ですから。なぜルビが被告なんですか?」
何にも分かっちゃいないというウンザリした顔をしてタヌキの裁判長はこう言いました。
「我々は人間を直接処罰できないのですよ。処罰したら我々タヌキは人間たちに殲滅されてしまいます。いいですか。判決を言い渡します。」
「被告ルビーを処払いに処す。現住所地から半径五〇キロメートル以内に近よってはならない。近寄った場合は直ちに処分される。」
何だ判決はルビーを野良猫にしろって言うのか。
僕は胸を引き裂かれるばかりでなく、自分のからだと心が引き裂かれて行くのを感じ、そのまま呆然と立ち尽くすのだった。
戻る 編 削 Point(5)