たぬき裁判/……とある蛙
その日は午後一時三十分に出頭しなさいというファクシミリが届いていたので、僕は飼猫の黒猫の代わりに裁判所に出頭することになっていました。僕は電車を五回も乗り継いで裁判所のある駅に到着しました。そして、駅の改札を抜け、駅前のスーパーマーケットのエスカレータで、スーパーマーケットの裏の公園まで行きました。 スーパーマーケットの五階は公園の入り口になっていました。
大きな花壇の周りをゆっくり歩いて、衛兵の詰所のある煉瓦造りの門柱の間まではほんの数分ですが気の重い僕は一時間にも感じられました。
初冬 僕はコートの襟を立て落葉を踏み締めながら
公園内にあるテニスコートの打球音を聞きゆっくりと歩きま
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