さらば/中原 那由多
 
変わらない景色に馴染めなくて
冬の雨も相変わらず嫌いなままだ
冷たい言葉遊びに対して
拒絶という、純粋すぎる答えを与えてくれた
微かにも願ったことがあったなら

さらば、青い花


屑鉄の山の上から見た月を
未だに忘れることができなくて
人間としての理由が掠れてしまったような声で
愛というものを囁いたなら

さらば、白い服


恋する乙女をうっすらと思い浮かべたら
そのまま宙で破裂した
ネジの外れた時計は今も
振り子を揺らそうと軋んでいる
最期はいつでも優しくありたいのに
涙の在処を見つけることができないのなら

さらば、赤い頬


自然体を装う必要が無くなっても
身体が楽になったりはしないのは
愛というものを繋いでいたこの鎖が
私の骨からできていたから
灰になった手紙の焦げ臭さを
いつか懐かしむ日が来るのなら

さらば、黒い糸



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