白く濁った世界/あ。
 
ーターを脱ぐ
飾りボタンは手で引っ張って外した
少し窓を開けてツバメに向かって放り投げる


えさと間違えて雛鳥の元へ届けて欲しかったのに
気付かれることすらなくゆっくりと曲線を描き
音も立てずにそろりと地面に横たわった
何度も季節が巡るうちにそこから芽が出て大きくなって
咲かせた白い花は乳臭い花粉を撒き散らし
やがて世界中を乳白色で埋め尽くしたらいいのに


小さな虫を捕まえたツバメが巣へ戻る
全てのものにいつの日か母がいた
原始の大気はきっと甘く白く濁っていた
握れないほど柔らかな香りが始まりだった
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