ムカシトンボ/風恋誦
 
淀んだ生地を鋏で裁てば その隙間からあの夏が洩れてくる
翡翠色のトンボが 嫋やかに低空飛行したら
日焼けした手で 無邪気な表情でつかまえる

でも 冷たい水の辺でしか 生きられない
人もまたそうだから 悪気はないけど 時々思う

手を加えるなら 最後まで
できないのなら 障らないで
その蒼さは 46億年の歴史が解けた(溶けた)
語り部だけが持ちうる威風かもしれない


言葉を紡ぐために 喧騒から遠ざかる
鈍行でひたすら 水源へのぼる

水の粒が舞いながら肌にぶつかるのは
気持ちいい
葉舟が海に出る頃には私
優しい顔ができてるかな?

何を 伝えるならば 書
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