金魚/フユナ
 


ここは人の家なのだ
息の音がするのは当たり前だ



二階の影は濃い
下にはあたしと
8歳のころ掬った
金魚のなれのはてだけ
(彼はどうしてこう長生きなのか)
(そろそろ死んではくれないだろうか)



息の音がするのだ
どこかから
ここは人の家で
それはあたりまえなのだが



パソコンは
亡くなった祖母の部屋にある
おととしの
祖母の死に顔はミイラにしか見えず
歯は取れ口はくぼみ
初めて見たくちべに姿は
まるでこどもを食ったようだった



食って食らわれる
水草はもう腐り果てて窓は一面にみどり




ここは
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