ライラック通り/
吉岡ペペロ
ライラックの香りが飛び込んできました
車を停めたときには気づきませんでした
4月の夜のことでした
まわりを確認してから枝ごと花を盗みました
それを車のダッシュボードのうえに置きました
4月の夜の涼やかさはこれだったのですね
車内が4月の夜になりました
清潔な女の香を思い出しました
そして公共性のない発進の仕方で
ライラック通りを逃走したのです
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