記憶/
たもつ
夜半から降り始めた砂が
やがて積もり
部屋は砂漠になる
はるか遠くの方からやって来た
一頭のラクダが
もうひとつのはるか遠くへと
渡っていく
わたしは椅子に腰掛け
挨拶を忘れてしまった人のように
耳抜きの方法を反復し続ける
窓の外に降り積もる雪が
記憶の中にある骨みたいに白くて
もう掌にはすくえない
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