針/mac
 
ねえ 彼は幸せになったかしら

心臓のまん真ん中に
極細の針をほーんのいちミクロンほど衝き立てた

誰も気付かない程度の

霜がおりて真っ白の
日のまだ昇らない寒い朝

小指がかすかに触れ合った程度の

黒いマフラーの
いつもおんなじジャケットの
声もろくに思い出せない

忘れようとした
あの彼の

その眼差しだけ鮮明に


もしもどこかで出会っても
けして気付いてはいけないけど

そう思えば思うほど
針はチクリと深く突き刺さる

ねえ 彼も幸せになったかしら



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