冬とけだもの/木立 悟
雨が宙の溝を流れる
音も光も流れ砕ける
見えない緑
見えない金に吼えつづける
夢と文は 同じ場所に居て
時おり向きを変えている
互いの息の影
互いの音の光を重ねる
夜の灯に痛み
目をこすり 曇をこすり
水へ降るひとすじ
枯れた花束を水紋を抱く
遠い水の先の先
虹が虹に喰らいつき
橋より小さな滝が生まれ
音は小さく つらなりつづけ
冬を塗りつぶすことのない冬の
何もないそのままの手のひらから
夜を道を燃す鬼火
背に描かれた爪の羽
冬を巡る遠い子の
銀の横顔が降りつもり
唇を斜めに隠している
夜の曇から隠している
空の岩から降る光
水草を水草を水草を埋め
流れが流れに打つ楔
顧みられぬ星にかがやく
四肢とたましいは四ッ足に重なり
四ッ足はただ空を踏む
さらに高く さらに無く
銀の水紋の弧を馳せる
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