脳が頭蓋をヒカキ、夢を見た/影山影司
で眠れないのは昔からだった。吾太は天邪鬼な性分を隠して生きてきたが、こればかりは治らない。十日に一回は、『ベッドで眠りたくない』という欲求がむやみにふくらみ、ソファや、硬い床の寝袋、揺り椅子、とかく、きちんとした寝具で眠ることを体が拒んだ。自分は眠ることより、まどろむことが好きなのだ、と気がついてからは眠る際に匙を握るようになった。かつて、溶けた時計を好んだ画家がそうしたように。
それで生まれてこの方二十数年はうまくやってきたのだが、ここ三ヶ月ほど、それではどうにもならなくなってしまった。もともと浅かった眠りはより浅く、五分ずつの細切れの眠りばかりを欲するようになり、慢性的な不眠の上に、インド
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