脳が頭蓋をヒカキ、夢を見た/影山影司
 
 ガンジス川を夢見ていた。
 あなたが見たことのない、異邦の川だ。
 とろけたチャイのような色合いで、流れはゆるやかに、向こう岸というより彼岸、と呼びたくなるほどに川幅は広い。川岸では野焼きで死体を処分する空き地と、半病人を寝かせるだけの塔と、餌はまだかとうずくまる野犬の集団。
 国中の道徳者たちが、この川に死ぬことを夢見ている。死期を悟った老人、病人は遠路で足を削るようにしてこの地にたどり着き、死ぬのを待つのだ。
 毎日毎日、塔からやつれほそった死体が布の担架で運ばれてくる。焚き火の上に乱雑に落とされ、火の粉を上げて肉の香りを際立たせる。見やれ、犬どもは舌をたらして喘いでいる。熱にやられ
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