星に名前がついているわけ/小池房枝
 
大切な道しるべだったし
島影が見えなくても海が渡れるようになったら
それはもう地球上どこにだって行けるっていうことだ

波とうねりを計り
星と太陽を読み取り
風を捉えて船を走らせることができるなら
どこまででも行けるし
帰ってだって来られる

砂漠を旅する者にとっては
大切な暇つぶしでもあっただろう星物語
季節の教え
創世の証

星が知らないのではなく
わたしたちが忘れてしまっている
星に名前がついているわけ
星に名前をつけた頃のわたしたちのこと
語り継がれてきた星々の名前

繰り返し
一人一人が何度でも
星に名前をつけていいこと

彼女の誕生日の頃の一番星とか
飲み会終電の明星とかね

そして近い未来にはもう一度
地球の外へ船を出すために必要になる
星の名前

宇宙という海が
生命の砂漠であろうとなかろうと
憧れを定め
そして一度は帰ってくるために

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